(1)東証一部上場企業の大型倒産
エルピーダメモリの倒産は、東証一部上場縦横企業の破綻が話題になっただけでなく、戦後最大の負債総額になりました。エルピーダ倒産は、JALやスカイマーク倒産を比較すれば、共通点と違う点が分かりやすく見つかります。エルピーダは、DRAMと呼ばれる半導体を生産する会社であり、大手電機メーカーの半導体部門が統合して設立した会社です。日本の電機メーカーは、DRAMの世界市場を独占していただけでなく、1980年代から1990年代前半は半導体市場を制圧していました。
半導体市場は、インテルやクアルコムのような企業だけでなく、サムスンやTSMCのような企業が台頭していますが日本企業の存在感は薄くなっています。エルピーダ倒産は、日本の電機メーカーの失敗事例として言われており、内容を分かりやすく理解することで投資の参考になりそうですね。
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(2)大手電機メーカーの半導体部門
- 半導体部門は大手電機メーカーの部門
- 半導体部門は利益を全て投資に回すことができない
- 半導体市場のシリコンサイクルに大手電機メーカーが対応できない
- 大手電機メーカーは半導体部門の利益を家電部門などの投資に回した
大手電機メーカーは、バブル崩壊により多額の損失を計上しており、半導体部門の利益は赤字の穴埋めに使われてきました。日本の電機メーカーは、半導体部門に全力の投資をしていないときに、日米構造協議による半導体協定をきっかけに外資系企業にシェアを奪われます。
エルピーダは、NECと日立だけでなく、三菱電機のDRAM部門を統合していますが最盛期の勢いは統合時になくなっていました。日本メーカーは、半導体協定を遵守するためにサムスンに技術支援を行っており、経営陣の能力が低く技術理解がないため致命的にシェアを失ったからです。
(3)為替レートがエルピーダに与えた影響
- エルピーダは日本最大のDRAM生産会社
- エルピーダは世界市場で販売競争をしている
- エルピーダはDRAM市場の利益は再投資に回している
- エルピーダの競合は為替レート円高ウォン安により事業拡大
- エルピーダの倒産した時期は民主政権による超円高の時期に発生
半導体産業は、シリコンサイクルと呼ばれる景気変動の影響を短期で大きく受けるため、業績を安定させることが難しい業界と言われています。エルピーダが倒産した理由は、シリコンサイクルの影響を受けたことが大きな理由と言われていますが、真相は少し異なります。
エルピーダが倒産した時期は、リーマンショック後に、民主党政権が為替レート円高ウォン安を放置していた時期と重なっています。日本の輸出産業は、民主党政権による円高政策により崩壊しましたが、エルピーダも韓国企業にシェアを奪われて倒産していますね。
(4)韓国企業のDRAMシェア拡大 円高ウォン安政策の影響
2007年第1四半期のDRAM世界シェアランキング IHS発表
- 半導体世界シェアランキング1位 世界シェア26% サムスン
- 半導体世界シェアランキング2位 世界シェア23% SKハイニクス
- 半導体世界シェアランキング3位 世界シェア13% キマンダ
- 半導体世界シェアランキング4位 世界シェア12% エルピーダ
- 半導体世界シェアランキング5位 世界シェア9% マイクロン
2014年第1四半期のDRAM世界シェアランキング IHS発表
- 半導体世界シェアランキング1位 世界シェア37% サムスン
- 半導体世界シェアランキング2位 世界シェア28% SKハイニクス
- 半導体世界シェアランキング3位 世界シェア27% マイクロン エルピーダを買収
- 半導体世界シェアランキング4位 世界シェア4% 南亜
エルピーダの当時の経営状況は、設備投資資金の捻出が経営課題になっており、投資を継続するために業界内でマイクロンや台湾企業などの提携を行っていました。エルピーダの倒産は、資金繰破綻によって発生しており、半導体世界シェアランキングは大きく変化しています。
イエローキャブ破産の理由をまとめましたが、主力事業の展望がないときに、会社を破産して清算することも重要な決断になります。エルピーダは、DRAM生産や半導体の高い技術力があったため、同じ半導体市場の企業がスポンサーになって倒産後に買収しています。
エルピーダの倒産前から倒産後にかけて、半導体市場は寡占化が進んでおり、上位3社の販売シェアは大きく高まっています。韓国企業のサムスンとSKハイニクスは、エルピーダの倒産後も市場シェアを高めており、民主党政権の円高政策で韓国経済はシェアを高めることに成功したことが分かりやすいですね。
(5)エルピーダが銀行取引に失敗
- JALはメガバンクや政策投資銀行と密接な取引
- スカイマークは無借金経営を行っており銀行取引が希薄
- エルピーダはメインバンクを作らずに金利の安い銀行から借りていた
三井住友建設倒産の可能性をまとめましたが、メガバンクは、財閥系列の企業だから助けるという時代ではなくなっています。エルピーダは、運がないため倒産していますが、現在は競争力の回復が始まりました。
エルピーダの現在は、倒産後にマイクロンが買収しており、エルピーダのDRAM工場は円安により価格競争力が高まっています。マイクロンは、エルピーダの買収成功により市場シェアを高めていることが2014年第1四半期のデータから分かりますね。
JALの倒産は、メガバンクや政策投資銀行から多額の融資を受けていましたが、倒産後に債権放棄を要請しておりOB年金を守りながら経営再建していますね。エルピーダの倒産理由は、銀行との取引関係が希薄な中で、円高による逆風が長すぎたことが破綻の原因です。 スポンサードリンク
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